先日、「Timer Camera」の内蔵バッテリーを「LiPoバッテリー」から「単四型Ni-MH電池(4本)」に交換してみました(記事は こちら)。
「Timer Camera」は、スタンバイ時の消費電力が非常に小さいというのが最大の特長ですが、USBポート経由で外部給電している時にはこのメリットは得られません。
一方、内蔵バッテリーで動作している時、デバイスによってはバッテリー電圧が3.7V〜4V程度の時に動作が不安定になるという問題があります。
これらの問題に対し、内蔵バッテリーを「LiPoバッテリー」から「単四型Ni-MH電池(4本)」に交換することにより、スタンバイ時の消費電力を非常に小さくしつつ、バッテリー電圧に依らず安定して動作させることができる目処がたちました。
この結果を踏まえ、「Timer Camera」+「単四型Ni-MH電池(4本)」に、小型のソーラーパネルを追加した「ソーラーカメラシステム」をつくり、畑に設置したいと思います。
10分に1枚の間隔で写真を撮影し、それをWebサーバに送信するという処理を、ソーラーパネルで発電した電力で常時賄うのが目標です。
畑に長期間設置し、この構成で本当に常時稼働できるか確認したいと考えています。
私はこの分野の専門家ではなく、ネットや書籍で調べた情報に基づいて検討・実施しています。 正常動作や安全性などは保証できませんので、本記事を参考にされる場合は自己責任にてお願いいたします。
システム構成
以下のソーラーパネルを見つけました。
SeeedStudioの0.5W小型ソーラーパネルです。
ホームページ を見てもきちんとした仕様が分かりにくいのですが、以下の仕様であると見なして見積もりを行うことにします。
- 開放電圧:6.4V
- 最大出力電圧:5.5V
- 最大出力電流:90mA
- 短絡電流:100mA
また、充電池は単四型Ni-MH電池を4本直列したものを使います。
- 電圧:1.2V(満充電時1.4V程度)
- 容量:800mAh
ソーラーパネルと充電池の間に、ダイオードをひとつ挿入することとします。
机上検討
電流値について
まず「Timer Camera」については、先日の記事(こちら)より、10分に1枚の写真を撮影したときの平均消費電流値は「100mA × 9sec / 600sec = 1.5mA」なので、3日間で消費するのは 1.5mA×24h×3日 = 108mAh@3日 となります。
次に「ソーラーパネル」については、3日のうち3.5時間だけ最大能力(90mA)で発電できるとすると、90mA×3.5h = 315mAh@3日 となり、「Timer Camera」の電流消費より大きくなります。3日に1度快晴であれば常時稼働できる計算です。
「充電池」の容量は 800mAh なので、「Timer Camera」の3日分の消費を十分に賄えます。
電圧値について
まず「Timer Camera」について、充電池がつながる電源レギュレータ(SY8089)、RTC(BM8563)への供給電圧上限は、いずれも 5.5V(絶対最大定格は 6.0V)です。また、電源電圧が 4V を下回ると、デバイスによっては動作が不安定になるため、「Timer Camera」の動作電圧範囲を 4V〜5.5V とします。
次に「充電池」については、満充電時の電圧は 1.4V × 4本 = 5.6V です。「Timer Camera」の供給電圧上限をわずかに超えていますが、絶対最大定格よりも下なので、問題なしと判断することにします。
安定動作時の電圧(公称電圧)は 1.2V × 4本 = 4.8V で、「Timer Camera」の動作電圧下限より高いため問題ありません。
「ソーラーパネル」については、最大出力時電圧は 5.5V、ダイオードを経由して充電池につながるので、ダイオードでの電圧降下を0.5Vとすると「充電池」に供給されるのは 5.0V程度 となり、満充電時の電圧(5.6V)より低いので過充電の心配はありません。また、充電池の安定動作電圧(4.8V〜5V 程度)以上なので、きちんと安定動作状態まで充電できるはずです。
最後に、「ソーラーパネル」の開放電圧は 6.4V で、ダイオードを経由すると 5.9V になります。ソーラーパネルの出力特性を直線近似すると「充電池」の満充電時の電圧(5.6V)における「ソーラーパネル」の出力電流値は 30mA となります。この値は、充電池に常時充電し続けてもOKと言われるトリクル充電電流(充電池容量の 0.05倍。800mAh × 0.05 = 40mA)よりも小さく、「ソーラーパネル」と「充電池」を繋ぎっぱなしにして常時充電しても問題ないはずです。
組み立て
「Timer Camera F」を使います。
まずは「Timer Camera」からLiPoバッテリーを取り外し、代わりにSHコネクタを取り付けて、ケースのカバーを元のとおりに戻しておきます(ケース側面のツメを引っ掛けるための穴から、コードを出しておきます)。
こちらのケースに格納します。
こんな感じに格納するイメージです。
まずは、ケースのカバーに、カメラのレンズ用の穴と、ソーラーパネルからコードを引き込むための穴を開けます。
レンズ用の穴には、防水両面テープで透明のプラ板を貼り付けます。カバーの表側にソーラーパネルを、こちらも防水両面テープで貼り付け、コードは内側に引き込んでおきます。
なお、このケースはプラスチックが結構厚い(3ミリ)ため、穴を開けただけでは穴の縁がカメラに映り込んでしまいます。そのため、穴の縁の部分を面取りしておきました。
滑り止めのために「Timer Camera」にゴム版を貼り付け、結束バンドに穴を開けたものとネジを使い、「Timer Camera」をケースに固定します。これでかなりしっかりと固定でき、使っている途中にカメラがゆるんで写真の向きが変わったりはしなさそうです。
コードを引き込んだ穴には、防水のため、一応シーリング材を塗っておきます。
ケースの本体側にも穴をあけ、こちらで購入したカメラ用の雲台を取り付けます。
こちらの穴にもシーリング材を塗っておきます。
最後に「単四電池4本用電池ボックス」「ソーラーパネル」「ダイオード」「Timer Camera」を回路図のとおりにはんだづけしします。はんだづけした部分は絶縁のため、ダイオードも含めて熱収縮チューブで封止しておきます。
ケース内で電池ボックスがガタガタしないように、ゴム版と両面テープを使って固定しています。
雲台にクリップを取り付けて完成です。
以前つくったソーラーカメラシステムはこちらです。
これでも十分コンパクトにできたと考えていましたが、今回のものは更にコンパクトです。
従来は電源をUSBポートから供給していましたが、それを内蔵バッテリー用のポートに変更したことで大幅に低電力化でき、ソーラーパネルを小さくできたのが要因です。
設置
早速、畑に設置しました。
これで本当に、長期間にわたり安定して稼働できるか試そうと思います。
ちなみに、「Timer Camera X」でも、同様のシステムをつくりました。
こちらは「Timer Camera」の厚さが「F」よりも薄いため、ひと回り小さいケースに格納できました。
こちらも畑に設置しました。
なお、私がM5Stack、M5StickCの使い方を習得するのにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。
ごく基本的なところから、かなり複雑なスケッチや、ネットワーク接続など、比較的高度なものまで、つまづかずに読み進めていけるような構成になっており、大変わかりやすい本です。