「タンニン鉄」によるパクチーの育苗実験

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M5Cameraの撮影例

こちらの雑誌に「タンニン鉄」というものが載っています。


鉄などのミネラルは、人間の体にとって大切なものですが、鉄は土の中に大量に含まれているにもかかわらず、作物には吸収されにくい状態になっているそうです。
それに対し、鉄をお茶に浸けると、お茶の中の「タンニン」の働きにより、鉄がお茶の中に溶け出し、作物に吸収されやすい状態になるとのことです。
お茶はもともとミネラルが豊富ですが、タンニンと反応して鉄分も増えることで、それを作物に与えると、作物の栄養価が高くなったり、大きく育ったり、アクやエグ味が消えたりと、良い影響がたくさんあるそうです。

以前、この「タンニン鉄」を使って、ネギの生育実験を行いました(記事は こちら)。

スーパーで買ってきたネギの根元の部分を土に差し、それに水を与えた場合と「タンニン鉄」を与えた場合とで、生育にどのような差が出るのか調べたところ、茎の成長は水だけの方が早く(徒長?)、根のはり具合はタンニン鉄の方がしっかりしているという結果になりました。

今回は、同様の実験を「パクチー」で行ってみます。

ポットにパクチーのタネをまき、自宅ベランダで育てる機会があったので、半分には水を与え、残り半分には「タンニン鉄」を与えて、生育に差がでるかどうか調べました。

実験に使う苗について

5月12日にポットにタネを撒きました。

5月17日(タネまきから5日後)、ようやく芽が出てきました。

5月20日(タネまきから8日後)、このような状態になりましたので、これを使って実験を始めます。

実験に使うタンニン鉄について

水に使い捨てカイロとティーバックのお茶をつけて、一晩置いておきます。

実は、最初は「麦茶」のティーバックを使って「タンニン鉄」をつくろうとしましたが、できませんでした。
調べたところ、麦茶にはタンニンが入っていないそうです。

また、ティーバックに入ったままのお茶と「不織布」に入ったままのカイロを水につけたところ、「タンニン鉄」ができませんでした(水が黒くなりませんでした)。
不織布からは鉄分が溶け出さないようです。

不織布の中に入っている鉄粉を、水に直に入れると、水はすぐに真っ黒になりました。

実験方法

8つあるポットを4つずつに分けます。

一方には水で、もう一方には「タンニン鉄」でポットの底の部分を浸し、しばらく置いておきます。

その後、ベランダに置いてある台にポットを設置し、以降は数日間にわたり経過を観察します。
なお、ベランダは西向きで、台にはこの上の段にも物が置いてあるので、日当たりはよくありません。

毎朝、水のグループには「水」を、タンニン鉄のグループには「タンニン鉄」を、少しだけ与えます。

以前と同じように、「M5Camera」というIoTデバイスで一定時間間隔で写真を撮影し、タイムラプス動画をつくろうと思います。

成長の様子

実験開始後、数日間にわたる成長の様子(タイムラプス動画)はこちらです。

予想に反して、ふたつのグループで、成長具合の大きな違いは見られませんでした。

また、6月1日頃には、「タンニン鉄」のグループの方の葉が、若干枯れかけてきているような感じになってきました。
そのため、それ以降は「タンニン鉄」のグループにも、毎朝「タンニン鉄」ではなく水を与えるようにしました。

実験結果

6月9日(タネまきから28日後)、ポットではもうこれ以上の成長が見込めなさそうなので、実験を終了することにしました。

こんな感じです。

「タンニン鉄」のグループです。
一部の苗は枯れ、他も葉っぱがところどころ黄色くなっています。

水のグループです。
「タンニン鉄」グループのような症状は見られません。

次に、根の状況を確認します。
ふたつのグループから、成長の具合が同等のポットをひとつずつピックアップします。左が「タンニン鉄」、右が「水」です。

ポットから苗を取り出し、根が切れない程度に土を取り除き、水で軽く洗います。

結果はこちらです。左が「タンニン鉄」、右が「水」です。

「タンニン鉄」です。

「水」です。

すごく大きな違いになりました!

予想に反して、「タンニン鉄」の方は根もヒョロヒョロ、対して「水」の方はガッシリ張っています。
根から土を取り除く時も、「タンニン鉄」の方はスルッと取れたのに対し、「水」の方は根と土がしっかり絡み合っており、なかなか取れない感じでした。

土も若干、感じが変わっていました。
「水」のグループは土がさらっとしているのに対し、「タンニン鉄」のグループは、土が若干重たい感じになっていました。

今回の実験では明らかに「水」の方が良いという結果になりました。

ひとつのポットでしか確認していないので、個体差などがあるのかもしれませんが、少なくとも、何も考えずに「タンニン鉄」を与えまくるのではなく、少しだけで試して効果を確認してから広く与えるのが良いように思います。

この後、残りのポット苗を畑に植え付けましたが、やはり「水」グループの方が根張りがしっかりしているように感じました。