マイクロビットを使ってみる 〜ワークショップ参加者の皆さんがつくった作品を紹介します

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電子工作の作例

私は、小中学生にプログラミングなどを教えるボランティアグループのメンバーになっています。

このグループでは一昨年度より、小中学生に電子回路とマイクロビットプログラミングを教える通年制のワークショップを実施しています。
月1回のペースで合計9回実施し、「電子回路」や「プログラミング」についてそれぞれ数回の講義を行う他、そこで得られた知識を使って、各参加者に自由に作品をつくってもらおうという活動です。

先日、2023年度の全てのカリキュラムが終了し、「成果発表会」を開催しました。
発表会の場では、生徒の皆さんがプレゼン資料なども準備し、自分の作った作品を紹介してくれました。

その場で、改めて生徒の皆さんがつくった作品を見た訳ですが、当初の私たちの予想をはるかに超えた、本当にすばらしい作品ができあがっていました。
あまりにもすばらしかったので、ここで作品の概要を紹介しておこうと思います。


のろのろカズキカー(小6)

本当は空を飛ぶ乗り物がつくりたかったそうですが、とても難しかったので今回は地上を走る車をつくることにしたとのことです。

コントローラーで操作するロボットカーです。
マイクロビットはコントローラーに、モーターなどは車体にのせ、両者を長いコードでつないでリモコンで操縦します。
前進後進はモーターで、車の向きを変えるのはサーボモーターで行います。モーターはマイクロビットのA, Bボタンで、サーボモーターはマイクロビットの傾きで制御するようにしました。
ダンボールでつくったタイヤがすぐに壊れてしまうので、その補強方法でいろいろ工夫したそうです。

Scratchすごろく(小4)

ゲームが大好きで、普段からマイクラなどで遊んでいるとのことで、今回はスクラッチのすごろくゲームをマイクロビットで遊べるように改良しました。

マイクロビットを2台使います。
1台はサイコロとして使います。マイクロビットを振ると音が鳴り、LED画面に1〜6のいずれかの数字がランダムに表示されます。
もう1台はパソコンのマウスの代わりとして使います。A, Bボタンでスクラッチ画面上の駒を動かすことができます。
もともと自分の好きだったゲームにマイクロビットを組み合わせた点がポイントです。

おもちゃんしっぽロボ(小3)

ペットの犬の名前が「おもち」です。
おもちは散歩が苦手でお友達がいないので、おもちの遊び相手になるような機械が欲しいと思ってこの作品をつくったそうです。

人感センサを搭載し、人や犬が近づいたらしっぽを振り、おもちが喜ぶような音を鳴らし、LCD画面に「I’m happy」と表示します。
また、周りがうるさいときにはおもちが怖がるような音を鳴らし、マイクロビットのLED画面に顔アイコンを表示します。
とてもかわいらしい作品に仕上がっています。

白くまブリーズ(小4)

別に購入したクーラー工作キットを改造しました。
このクーラー工作キットは、凍らせたペットボトルに風を当てることで、冷風を出すというものです。

この工作キットとマイクロビットを組み合わせ、気温が設定温度より高くなったら自動的にプロペラが回り、冷風が出てくるようにしました。
マイクロビットのA, Bボタンで設定温度を変更できます。

既に持っているものを組み合わせて、新しいものをつくっているところがとても良いと思います。

犬を助けよう!!(小6)

無線で操作するロボットカーです。
ペットの犬を乗せて、目的地まで送り届けてあげるという設定で作品を計画しました。

マイクロビットを2台使い、無線でロボカーを操縦します。
コントローラー側のマイクロビットを傾けるとロボカーがその方向に進みます。この方法を採用することで直感的に操作できるようにしています。

また、犬を乗せるという設定なので、安全のために超音波センサも搭載しています。障害物にぶつかりそうになったら、操縦している状態に関わらず緊急停止します。

4足歩行ロボット「ネコ型になる予定」(小5)

4足歩行ロボットです。
歩くロボットにあこがれていたのでこの作品をつくったそうです。
歩く仕組みを実現するためにテコクランク機構をつかったところ、パーツをうまく格納するために本体を2階建てにしたところが工夫した点です。

床の材質によっては足が滑ってしまってうまく進まないため、調整に苦労していました。
将来的にはこのロボットを改良し、「暗くなると目が光るようにする」「尻尾をつける」「言葉を聞いて耳が動くようにする」「無線で操縦できるようにする」などを実現したいそうです。

全自動ベルトコンベア(小6)

コースを転がっておりてきたボールをベルトコンベアでコースの上まで運ぶ装置です。
ベルトコンベアが常時動いているのではなく、ボールがおりてきた時だけ動くのがポイントです。
人が乗っている時だけ動くエスカレーターのモックアップのような作品です。

ボールがコンベアの入り口におりてきたときだけコンベアが動くように、ボールはアルミホイルで包み、コンベア入り口の下にもアルミホイルで電極をつくってスイッチの代わりにしています。
ワークショップで配布した部品と、家にあった材料だけでつくっています。

人と温度を感知するせんぷうき(小4)

「気温」と「近くに人がいるかどうか?」を調べ、気温が高く、なおかつ人がいる時だけ動く扇風機です。
本体にはレゴを、プロペラには以前つくった竹トンボを活用しています。
また、以前購入して家に置いてあった電子工作キットに入っていた「人感センサ」をつかっています。

人がいない時には自動的に停止するという、実用的でとてもエコな作品です。
また、手持ちの材料をうまく活用してつくられている点も、環境を配慮した非常に良いポイントです。

ハト時計ときのくにフェスティバルのロボット(小6)

一昨年からこのワークショップに参加している生徒の作品です。
一昨年、昨年と「小学生ロボコン」に出場し、そのためにつくったロボットを紹介してくれましたが、今年は「きのくにロボットフェスティバル」に出場するためにつくったロボットを紹介してくれました。
「きのくにロボットフェスティバル」の競技内容は7.5cm角のスポンジを運ぶというもので、モーターはいくつ使ってもいいのですが、使えるスイッチは2個まで、プログラミングも不可という制限があります。
そのためこの作品では、右タイヤとスポンジを掴むためのアームをひとつのスイッチで操作するようにしています。アームを開閉するときには右タイヤも同時に動きます。

もうひとつ、「ハト時計」も紹介してくれました。
こちらはおばあちゃんからのリクエストで製作した作品です。
ハトは3Dプリンタで、ハトが出てくる機構はレゴでつくられています。毎時0分になったら時間の数だけハトが出てくる仕掛けです。

ライントレーサーによる全自動電車(小6)

こちらも一昨年からワークショップに参加している生徒の作品です。
毎年、電車に関連する作品をつくっていて、一昨年の作品は「電車が発車するときの駅員さんの旗振りを再現(リサとガスパールの旗振り人形)」、昨年は「電車が到着・発車するときの扉の開閉を再現(ミッフィー電車)」したものでした。
今年はそれらを発展させ、ライントレースで走る電車をつくりました。

電車が駅に着いたら自動で止まり、ミッフィー電車(去年の作品)の扉が開きます。少し時間が経つと発車メロディーがなり扉が閉まります。その後遮断機が上がり、電車が動き始めます。電車はラインに沿って走り、また駅に戻ってきます。

なお、本当は一昨年の作品も組み合わせたかったそうですが、マイクロビットが足りず採用できなかったとのことです。

海のごみ回収プロジェクト「自動軽石回収船を作る」(小6)

こちらも一昨年から参加している生徒の作品で、海面に浮いている軽石を回収する船型ロボットです。
海底火山の噴火による軽石が全国に大量に漂着し、それが入り込んでしまった船が故障しているというニュースを見て思い付いたそうです。
scratchの画像認識で噴火を検知したら船が出動します。船にはドライヤーを改造したものが取り付けられており、風力で進みます。また、モーターでカゴを引き上げることで海面に浮いている軽石を回収します。

なお、今回の作品では噴火の検知と船の制御を別々のマイクロビットで行なっているので、今後ひとつのマイクロビットで動くよう改良したいとのことです。

こちらの生徒は、一昨年「庭の花を救うプロジェクト」ということで自動水やりロボットを、昨年は「リユースロケットプロジェクト」ということでペットボトルロケットをつくりました。今年の「海のごみ回収プロジェクト」を加えて「陸・空・海」制覇です。

どの作品も、個性にあふれたすばらしいものでした。

実は昨年度までは、作品のアイデアが浮かばない生徒のために、作例紹介などいろいろなヒントを与えていたのですが、今年度はそのようなことはあまりせず、生徒の主体性に任せるようにしていました。
そのため生徒によってはギリギリまで作品が決まらず、成果発表会の前にはとうとう「補講」まで実施することになりました。
それでも最後の追い込みはすばらしく、最終的にはみんなすばらしい作品を仕上げていました。
ご両親もたくさんのサポートをしておられたようで、親子で力を合わせて作品づくりをするというのもとても良いことだと思いました。

また、つくった作品の内容はもちろんのこと、プレゼン資料の質や発表の仕方もすばらしく、本当に感動しました。
中でも3年間連続して参加してくれた生徒たちは、レベルもとても高く、その上それぞれの作品に個性があり、とても面白く話を聞くことができました。

発表会の終了後には「来年度も参加したい」と言いにきた生徒が何人もいて、とても嬉しく感慨深い1日になりました。

 

なお、私がマイクロビットの使い方を習得するのにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。


初心者向けから、比較的高度なものまで、さまざまな情報が記載されているだけでなく、子供向けの作例も多数掲載されていますので、「プログラミング教育」のための題材さがしなどにもおすすめです。