オペアンプを使って微小電流を測定

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工作

数μA程度の小さな電流値を測定したい機会がありました。
例えば単三電池2本(3V)に1MΩの抵抗をつなぐと3μA程度の電流が流れるはずですが、これを測定したいと考えています。

まずは普通にデジタルテスターで電流値を測定してみます。

最初に、電池2本と1MΩ抵抗をつないだ状態で、デジタルテスターで抵抗両端の電圧値を測定すると「3.02V」でした。これより机上計算では「3.02V / 1MΩ = 3.02μA」の電流が流れていることになります。
次に、この電池と抵抗の回路の途中にデジタルテスターを挿入して電流値を測定してみたところ「5.8μA」という結果になりました。机上計算とはそこそこズレた値になりました。
デジタルテスターの電流測定では、テスター内部の抵抗(シャント抵抗)に電流を流し、そこで発生する電圧降下から電流値を求めているそうです。そのため測定対象となる電流値が小さくなると誤差が大きくなるようです。

微小電流を測定する簡単な方法はないかと色々調べていたところ、「トランジスタ技術」の2021年9月号に「トランスインピーダンスアンプ」という回路についての記事が掲載されていました。

「トランスインピーダンスアンプ」は、オペアンプの「+」端子をGNDに、出力端子を帰還抵抗 Rf を介して「ー」端子につなぐという簡単な回路構成になっています。
測定対象電流 Is をオペアンプの「ー」端子に流し込むと、オペアンプの入力端子はハイインピーダンスのため、Is は Rf を経由してオペアンプ出力に流れます。このためオペアンプ出力の電圧 Vout を測れば「Vout = – Rf × Is」の式より Is が計算できるという仕組みです。

早速試してみます。

使用するオペアンプは、入力バイアス電流が小さいFET型がよいとのことなので、秋月電子で販売されている「NJM072D」を使うことにします。バイポーラ型のオペアンプだと、入力バイアス電流は 数n〜μA 程度だそうですが、このオペアンプの入力バイアス電流は 30pA です。
なお、この「NJM072D」にはふたつのオペアンプが入っています。今回使うオペアンプはひとつなので、残った未使用の方はボルテージフォロワ(バッファ)の構成にしておきます。

オペアンプの「V+」「V-」には、単三型Ni-MH電池を8本直列につないだものを使います。テスターで測定したところ、電池の電圧は「10.29V」でした。
この電池の電圧を100kΩの抵抗2本で分圧し、中間ノードを回路中の「GND」として使用します。
なお、本調査の途中でオペアンプ出力電圧波形をオシロスコープで観測したところ、ノイズがのっていたため、「V+」と「GND」の間、「V-」と「GND」の間にそれぞれ 0.1μFの容量を追加しています。

Rf は1MΩにします。最終的な回路図は以下のようになります。

ブレッドボードで回路をつくります。小さい方のブレッドボードが測定対象となる「電池+抵抗」の回路です。先ほどデジテルテスターにつないでいた箇所を、今回はオペアンプの「ー」端子と GND につなぎます。

オペアンプの出力と GND 間の電位差をデジタルテスターで測定すると「-2.92V」となりました。先ほどの「Vout = – Rf × Is」の式に当てはめると、Is は「2.92μA」となります。机上計算の「3.02μA」にかなり近い結果が得られました。

「トランジスタ技術」の記事には「μA以下の電流も精度良く測定可能」と書かれていたので、さらに微小な電流値についても確認してみました。

測定対象の抵抗値を 1MΩ から 100MΩ に変更しました。「30.2nA」の電流が流れていることになります。Rf の値も 1MΩ から 100MΩ に変更しました。

なお、この条件でオペアンプ出力電圧波形をオシロスコープで観測したところ若干のノイズがのっていました。「トランスインピーダンスアンプ」のノイズ対策として、Rf と並列に容量を追加するという方法があるようなので、それを試してみることにしました。
本来、ここで追加する容量値は 数十pF 程度が適当なようです。また、ChatGPTに聞いてみると、10pF程度の小さな容量から順に試していき、ノイズが小さくなる容量値を採用するのがよいとのことでした。
手持ちの容量を小さいもの(10pF)から順に試していったところ、今回は 10nF を追加してときにノイズが最も低減されたため、この容量を採用することにしました。

オペアンプの出力と GND 間の電位差をデジタルテスターで測定すると「-2.97V」となりました。「Is = 2.97V / 100MΩ = 29.7nA」となります。電流値がμA以下になっても非常に良い結果が得られました。