Unit Cam Wi-Fiカメラを小型ソーラーモジュールで常時稼働させる

スポンサーリンク
Unit Cam Wi-Fiカメラ

以前、「M5Camera」を小型ソーラーパネルで常時稼働できるようにしたことがあります(記事は こちら)。
2Wの小型ソーラーパネル2枚をM5Cameraにつなぎ、10分に1枚の間隔で写真を撮り続けることができるようにしたものです。撮影した写真をWebサーバに送信することで、遠隔地からでも画像を見ることができるようにしています。

数台を畑に設置し、畑の様子を撮影していますが、数ヶ月にわたり快調に動き続けています。

さて、先日「Unit Cam Wi-Fiカメラ」というM5Stack社製のカメラデバイスを低電力化しました(記事は こちら)。
Ni-MH電池4本で10分に1枚の間隔で写真撮影した場合、平均消費電流値は、なんと「2.23mA」になりました。

先ほどのソーラーパネル付きM5Cameraは、平均消費電流値を 25mA と見積もってソーラーパネルのサイズなどを最適化しているのですが、「Unit Cam Wi-Fiカメラ」であれば、それよりも1桁小さい電流消費で動くということになります。
そうであれば、もっと小さいソーラーパネルで「Unit Cam Wi-Fiカメラ」を常時稼働させることができるかもしれません。

目を付けたのは、秋月電子で購入した、こちらのソーラーパネル(M-16017)です。

最大出力が300mW(最大出力電圧:4.5V、最大負荷電流:65mA)のソーラーパネルです。
以前購入したものの、あまりにも発電能力が小さいので、活用法を思いつかなかったものです。

うまく使えば、このソーラーパネルで「Unit Cam Wi-Fiカメラ」を常時稼働できるかもしれません。そうなれば、先ほどのM5Cameraを使ったシステムよりも、さらに小型化したソーラーカメラシステムをつくれそうです。

Unit Cam Wi-Fiカメラ(Yahoo!ショッピング)

私はこの分野の専門家ではなく、ネットや書籍で調べた情報に基づいて検討・実施しています。
正常動作や安全性などは保証できませんので、本記事を参考にされる場合は自己責任にてお願いいたします。

構成

色々と考えて、以下のような構成で試してみることにしました。

  • ソーラーパネル:秋月電子で販売している「携帯機器用ソーラーモジュール300mW(M-16017))」
    • 開放電圧:5.7V
    • 最大出力電圧:4.5V
    • 短絡電流:75mA
    • 最大負荷電流:65mA
  • 充電池:単四型ニッケル水素電池を3本直列
    • 電圧:1.2V(満充電時1.4V程度)
    • 容量:800mAh

ソーラーパネル出力にダイオードをひとつ挿入し、充電池と「Unit Cam Wi-Fiカメラ」に接続することとします。

事前調査

消費電流値

「Unit Cam Wi-Fiカメラ」を単四型ニッケル水素電池×3本で動かしたときの消費電流値を再確認しました。
動作中(起動してから写真撮影・送信してディープスリープに至るまでの一連の処理)の平均消費電流値と、ディープスリープ中の消費電流値を調べました。

結果は以下のとおりです(複数回測定し、結果の波形を重ね合わせました)。

一連の処理にかかる時間は 8.82sec で、その間の平均消費電流値は 73.7mA、ディープスリープ中の消費電流値は 1.9mA となりました。

10分に1枚の写真を撮影した場合の平均消費電流値は、73.7mA * 8.82s / 600s + 1.9mA = 2.98mA となります。

動作電圧

「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の「5V」「GND」端子に単四型ニッケル水素電池×3本をつなぎ、問題なく動作するか、またその際の電源電圧の推移を調査しました。
なお、本調査では「Unit Cam Wi-Fiカメラ」をディープスリープなしで常時稼働させるので、常時 73.7mA 程度を消費します。
単四型ニッケル水素電池は 800mAh なので、800mAh / 73.7mA = 10.9h 稼働できる計算になります。

結果は以下のとおりです。

10時間30分にわたり稼働できました。机上計算とほぼ同じ結果です。

電源電圧の推移は、Ni-MH電池の放電特性どおりです。
3.75V ぐらいから 3.6V ぐらいまで安定して動作しています。満充電状態で 4.3V、動作電圧下限が 2.9V となりました。

机上検討

電流値について

まず「Unit Cam Wi-Fiカメラ」については、平均消費電流値が 2.98mA なので、3日間で消費するのは 2.98mA×24h×3日 = 214.56mAh@3日 となります。

次に「ソーラーパネル」については、3日のうち3.5時間だけ最大能力(65mA)で発電できるとすると、65mA×3.5h = 227.5mAh@3日 となり、ぎりぎり「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の電流消費より大きくなります。3日に1度快晴であれば、なんとか常時稼働できる計算になります。

「充電池」の容量は 800mAh なので、「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の3日分の消費を十分賄えます。

最後に「ソーラーパネル」と「充電池」の関係を考えると、ソーラーパネルの最大負荷電流は 65mA であり、充電池容量(800mAh)の 0.08倍 です。常時充電し続けてもOKと言われるトリクル充電電流(充電池容量の 0.05倍)に近く、この程度であれば安全に充電できると思われます。

電圧値について

まず「Unit Cam Wi-Fiカメラ」について、内部で使用されている電源IC(SY8089)への供給電圧上限は 5.5V です。また、先ほどの事前調査の結果、動作電圧下限は 2.9V です。よって「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の動作電圧範囲は 2.9V〜5.5V となります。

次に「ソーラーパネル」については、最大出力時電圧は 4.5V、ダイオードを経由して「Unit Cam Wi-Fiカメラ」につながるので、ダイオードでの電圧降下を0.5Vとすると 「Unit Cam Wi-Fiカメラ」に供給されるのは 4.0V程度 となり、「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の電圧値上限より低いので問題ありません(開放電圧は5.7Vなので、ダイオードを経由すると5.2V)。

「充電池」については、先ほどの事前調査結果より、満充電時の電圧は 4.3V です。こちらも「Unit Cam Wi-Fiカメラ」の電圧値上限より低いので問題ありません。

最後に「ソーラーパネル」と「充電池」の関係を考えると、ソーラーパネルの最大出力時電圧が 4.5V、ダイオードを経由すると 4.0V程度 になるのに対し、充電池の満充電電圧は 4.3V、安定動作時電圧は 3.75V〜3.6V です。「パネル」の充電電圧が「充電池」の安定動作時電圧より高いので、きちんと安定動作状態まで充電できるはずです。また、「パネル」の充電電圧が「充電池」の満充電電圧より低いので、過充電の心配もありません。

動作実験

実際に回路を動かして、実験してみることにしました。

前述の回路を組んだ上で、以下のように電源電圧と発電電流を測定できるようにしておきます。
10分に1枚の間隔で写真を撮影・Webサーバに送信し、その際の発電電流値と電源電圧を測定します。

デバイスは我が家のベランダに設置します。
我が家のベランダは西向きのため、午後しか日が当たりません。
そのため、ソーラーパネルは南西向きに、角度45度ぐらいで設置することにしました。

結果は以下のとおりです。

この期間中の天気は「3/23:曇のち雨(日照時間4.6h)」「3/24:晴(日照時間6.8h)」「3/25:晴のち曇(日照時間9.1h)」「3/26:雨(日照時間0.0h)」「3/27;曇のち晴(日照時間8.3h)」でした(気象庁のデータより)。

さすがに終日雨の日には全く発電できていませんが、くもりの日でもそれなりに発電できており、その程度の発電量でも電源電圧は低下していません。写真撮影もきちんとできています。

半日しか日が当たらないベランダでも支障なく動作しており、屋外であれば、より安定して動作しそうです。

組み立て

それでは、実際に組み立てていきます。

「Unit Cam Wi-Fiカメラ」やその他の電子部品は、単四乾電池×3本用の電池ボックスが付いた、こちらの防水ケースに収納します。


最初に、ケースの蓋の、カメラのレンズが接する場所に穴を開けます。

ケースの中に水が入ってこないように、穴の部分に、内側から透明のプラ板を貼り付けます。接着には「防水用両面テープ」を使いました。

ケースの蓋に、ソーラーパネルも貼り付けます。ケーブルをとおすための穴を開けているので、こちらも「防水用両面テープ」で接着しています。

プラ板とケースのネジ穴を使って、「Unit Cam Wi-Fiカメラ」を固定します。
ソーラーパネルのケーブルをとおす穴には、一応、防水用のシーリング材を塗っておきます。

ケース本体の裏側には、このような雲台を取り付けます。


穴を開けてネジ止めします。こちらにもシーリング材を塗っておきます。
ダイオードは、電池ボックスの端子に直接はんだづけします。その他の結線も行います。

雲台には、大きめのクリップを取り付けておきます。これで、畑にあるポールなどに、簡単に設置できるようになるはずです。

できあがりです。かなり小型でスッキリしたものができあがりました。
ただ、カメラのレンズとソーラーパネルが同じ方向を向いているので、撮影する方角が限定されます。

早速、畑に設置しました。
撮影した写真はこちらです。

これで、長期間にわたり常時稼働できれば良いのですが。

2022年4月12日追記

カメラを設置してから20日ほど経過しました。

現在も順調に動いています。
もしもソーラーパネルなしでNi-MH電池のみで動かしていたら、11日で動かなくなる計算だったので、一応ソーラーパネルの効果はあるようです。

今後、更に長期間にわたって実験を続けようと思います。

このカメラでは、畑に植えたチューリップを撮影しています。
このところの陽気で、チューリップがきれいに咲いたので、チューリップ開花までの様子をタイムラプス動画にしてみました。
10分毎に撮影した18日分の写真をつなげています。

 

なお、私がM5Stack、M5StickCの使い方を習得するのにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。


ごく基本的なところから、かなり複雑なスケッチや、ネットワーク接続など、比較的高度なものまで、つまづかずに読み進めていけるような構成になっており、大変わかりやすい本です。