畑に「M5Camera」を設置して、作物の生育状況などを観察しています。
M5Cameraで一定時間ごとに写真を撮影し、それをWebサーバに送信して、遠隔地からでも画像を見ることができるようにしています。
畑には通信手段も電源もないので、通信手段としては「モバイルWi-Fiルータ」を、電源としては「ソーラー発電システム」を活用しています。
さて、畑に設置しているソーラー発電システムはいずれも、鉛バッテリーを使ったものです。
本来なら、カメラは必要に応じて設置場所を気軽に変えたりしたいのですが、バッテリーが重たいので、そんなに簡単に移動することはできず、一度設置したら、ほぼその場所に置きっぱなしになってしまっています。
また、材料費も、頑張って安いパーツで揃えても、どうしても1万円以上になってしまい、お気軽にカメラの台数を増やすことができません。
そんな訳で、もっとお気軽にM5Cameraを移動できるソーラー発電システムの構成を考えてみました。
コンセプトとしては、
- ソーラーパネルは、工作用の小型のものを使用する(アルミフレームは重たいので)。
- 充電池は、入手容易なニッケル水素電池を使用する。
- 制御回路などは使わず、M5Cameraに直結する。
という感じにできたらいいなぁと思います。
私はこの分野の専門家ではなく、ネットや書籍で調べた情報に基づいて検討・実施しています。 正常動作や安全性などは保証できませんので、本記事を参考にされる場合は自己責任にてお願いいたします。
構成
色々考えた結果、以下のような構成にすることにしました。
- ソーラーパネル:秋月電子で販売している「2W太陽電池モジュール(M-08919)」を2枚並列
- 開放電圧:6.9V
- 最大出力時電圧:5.9V
- 短絡電流:390mA
- 最大負荷時電流:340mA
- 充電池:単三形ニッケル水素電池を4本直列
- 電圧:1.2V(満充電時1.4V程度)
- 容量:1900mAh
ソーラーパネル出力にダイオードをひとつ挿入し、充電池とM5Cameraに接続することとします。
電流値について
まず「M5Camera」について、別途実施した調査の結果、動作中の消費電流値は111.4mA(写真1枚の撮影にかかる時間は平均5.1秒)、ディープスリープ中は18.3mAでした(CPU動作周波数を80MHzに落とした場合)。
平均消費電流値を25mAとすると、3日間で消費するのは 25mA×24h×3日 = 1800mAh@3日 となります。
次に「ソーラーパネル」については、3日のうち3.5時間だけ最大能力(340mA×2枚)で発電できるとすると、340mA×2枚×3.5h = 2380mAh@3日 となります。M5Cameraの消費より大きく、3日に1度発電できれば、M5Cameraの消費を賄える計算になります。
「充電池」の容量は 1900mAh なので、こちらもM5Cameraの3日分の消費を賄えます。
最後に、子供向けの太陽電池工作の書籍を見ると、ニッケル水素電池への充電は、電池容量の0.1〜0.4倍で充電すればよいと書かれていました。電池容量は1900mAhなので、適正充電電流は 190mA〜760mA となります。
ソーラーパネルの最大負荷時電流は 340mA×2枚 = 680mA で、上記の範囲に収まっています。よってパネルと充電池のバランスも問題ありません。
電圧値について
まず「M5Camera」について、内部で使用されている電源IC(SY8089)への供給電圧上限は5.5Vです。ただし、電源ICの入力にダイオードがついているので、ダイオードでの電圧降下を0.5Vとすると、M5Cameraに供給できる電圧値上限は 6.0V程度 となります。
次に「ソーラーパネル」については、最大出力時電圧が5.9V、ダイオードを経由してM5Cameraにつながるので、ダイオードでの電圧降下を0.5Vとすると 5.4V程度 となり、M5Camaraの電圧値上限より低いので問題ありません(開放電圧は6.9Vなので、ダイオードを経由すると6.4V)。
「充電池」については、満充電時の電圧が1.4V×4本 = 5.6V程度 となり、こちらもM5Camaraの電圧値上限より低いので問題ありません(満充電時の電圧を高めの1.45Vで見積もっても、1.45V×4本 = 5.8V で問題なし)。
最後に「ソーラーパネル」と「充電池」の関係を考えると、ソーラーパネルの最大出力時電圧が5.9V、ダイオードを経由すると 5.4V程度 になるのに対し、充電池の満充電時の電圧が1.4V×4本 = 5.6V程度 なので、こちらも概ねバランスがとれています。
組み立て
それでは、組み立てていきます。
M5Cameraやその他の電子部品は、これまで使ってきたのと同じ防水ケースに収納します(ケースの加工方法については こちら)。
今回は、別の用途で使っていたケースを使いまわしたので、ケーブルグランドが4つもついていますが、実際に使うのはひとつのみです。
使わないケーブルグランドの穴は、「自己融着テープ」を丸めて突っ込んで、塞いでおきました。
いつもは、ケースの上に別途ひさしを付けるのですが、今回はコンパクトにするため、プラスチック板で簡易的なひさしをつくって取り付けました。
ケースの裏には、いつもと同じように「カメラスタンド」を取り付けます。
今回は、実験中の充電池の電圧値も測定したいと考え、ケースの中に「電流電圧センサ」も入れたため、かなりごちゃごちゃしていますが、本来は電流電圧センサは不要で、その場合はケースの中はかなりスッキリするはずです。
ソーラーパネルはこのようなものです。
2枚のパネルを並列にはんだづけし、並べて木の板に接着剤で貼り付けます。
後ほど、このパネルを支柱に固定するので、T字金具も取り付けておきます。
このT字金具は、水道工事用の「一ツ穴T足」というもので、1個49円(税込)でした。
また、できるだけ雨を防ぎたいので、はんだづけ部分にシリコーン樹脂を塗ったり、広い範囲をテープで覆ったりと、できる範囲で対策をしています(気休めですが)。
ソーラーパネルのプラス側にはダイオードをつける必要があるため、ダイオードに以下のようにコネクタを取り付けました。
全体を熱収縮チューブで絶縁します。
ソーラーパネルの出力にもコネクタを取り付け、このダイオードとつなぎます。
このダイオードも、防水ケースの中に収納します。
今回は、安価に抑えることを優先して、これらのパーツを「防獣ネット用支柱」に取り付けることにします。
イレクターパイプだと1本400円以上するのに対し、この支柱は272円(税込)です。
支柱に、水道工事用の「立バンド」というパーツを取り付けます(本来の用途は知りません)。
このパーツは1個49円(税込)で、イレクターパイプ用の金具が1個数百円するのに比べると格安です。
ちなみに、水道工事用のパーツは、寸法がパイプの内径で表示されているようで、支柱の直径が約20mmなのに対し、14mmのサイズのものでちょうど良い感じになりました(支柱との間に薄いゴムを貼っています)。
このように取り付けることで、ソーラーパネルを適切な角度に調整することができるようになります。
カメラ用にも同じ金具を取り付けます。
この穴にカメラスタンドを固定します。これでカメラの向きも、ある程度は調整できます。
設置
支柱は、ハンマーで地面深くまで打ち込む必要がありますが、今回は既に、支柱に各種パーツが取り付けられています。
そのため、もう1本支柱を用意し、それを地面に打ち込んだ後に、そこにパーツ付きの支柱を結束バンドで固定することにします。
このような感じになりました。
従来の、アルミフレーム付ソーラーパネルと鉛バッテリーを使ったシステムに比べると、非常にコンパクトになりました。
参考までに、従来のシステムは以下のような感じです(ここで動かしているデバイスはM5Cameraではありません)。
材料費まとめ
使用した材料は以下のとおりです。
材料 | 個数 | 税込単価 | 購入先 |
---|---|---|---|
M5Camera | 1 | 2035円 | スイッチサイエンス |
USBケーブル(M5Cameraに付属) | 1 | ||
防水ケース(タカチBCAP091207T) | 1 | 967円 | モノタロウ |
ケーブルグランド(タカチRM10L-6B) | 1 | 90円 | モノタロウ |
カメラスタンド(SEC-STAND) | 1 | 186円 | モノタロウ |
ソーラーパネル(M-08919) | 2 | 600円 | 秋月電子 |
USBコネクタ(K-07429) | 1 | 120円 | 秋月電子 |
ダイオード(I-00127) | 1 | 20円 | 秋月電子 |
ミニブレッドボード(P-05155) | 1 | 130円 | 秋月電子 |
電池ボックス単三×4(P-00311) | 1 | 110円 | 秋月電子 |
ニッケル水素電池単三×4(Amazon Basic) | 1 | 907円 | アマゾン |
ケーブル用コネクタメス(C-12160) | 1 | 50円@10本 | 秋月電子 |
ケーブル用コネクタオス(C-13181) | 3 | 50円@10本 | 秋月電子 |
防獣ネット用支柱120cm | 2 | 272円 | コーナン |
立バンド | 2 | 49円 | コーナン |
一ツ穴T足 | 1 | 49円 | コーナン |
その他に、ベニヤ板、角材、プラスチック板、ゴムシート、自己融着テープ、防水用テープ、結束バンド、熱収縮チューブ、シリコーン、ネジなどが必要です。
M5Camera本体も込みで、なんと 6556円 でつくることができました。
本当にこの構成で安定して動くようであれば、畑にもっとたくさんのカメラを設置することもできそうです。
動作確認結果
このシステムを畑に設置してから5日が経過しました。
10分毎に写真を撮影し、その画像データをWebサーバに送信していたのですが、この期間中、問題なくデータを送信できていました。
また、写真を撮影するのと同じタイミング(10分毎)で、「電流電圧センサ」を使って充電池の電圧を測定し、Ambientに送信していました。
その結果は以下のとおりです。
ちなみに、最も近くの地点における気象庁の観測データによると、この期間の日毎の日照時間は以下のとおりです。
9/12 | 9/13 | 9/14 | 9/15 | 9/16 | |
---|---|---|---|---|---|
日照時間(h) | 0.1 | 3.6 | 0.0 | 5.3 | 3.0 |
この期間中の天気は、全般的にとても悪かったのですが、それでも調査開始時から電圧は下がっておらず、十分に発電できているようです。
長期稼働できそうな見込みがたったので、このまま調査を継続して様子を見ることにしたいと思います。
なお、本日夜から明日にかけて、台風が接近するようで、このような簡易的な設置の仕方で倒れたり飛ばされたりしないかが気になります。
そちらについても、様子を見ていきたいと思います。
2021年10月19日追記
設置してから1ヶ月以上が経過しました。
この期間中、天気の悪い日も普通にありましたが、それでも問題なく、継続して写真撮影できています。
充電池の電圧は以下のようになっています。
特に問題なく、十分に発電できているようです。
また、風の強い日などもありましたが、今のところ、飛ばされたり破壊されたりもしていません。
なお、私がM5Stack、M5StickCの使い方を習得するのにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。
ごく基本的なところから、かなり複雑なスケッチや、ネットワーク接続など、比較的高度なものまで、つまづかずに読み進めていけるような構成になっており、大変わかりやすい本です。