「FAL.CO」のソーラーモバイルバッテリー「SoNAe」を試す

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工作

知り合いの方から、「SoNAe」という名前のモバイルバッテリーを頂きました。
「FAL.CO」というブランドがクラウドファンディングで販売しているもので、大容量のモバイルバッテリーに、非常時の充電手段としてソーラーパネルがついているという、大変ユニークな製品です。

知り合いの方は、このモバイルバッテリーを電源のない圃場に設置することで、IoTデバイスを常時稼働できないかと考えておられます。
その点に絞って、ソーラーモバイルバッテリー「SoNAe」について、少しだけ調べてみました。

ソーラーモバイルバッテリー「SoNAe」について

「SoNAe」はバッテリー容量が30000mAh@3.7Vの大容量モバイルバッテリーです。
給電出力が大きくPCにも充電可能、同時に4台のデバイスに充電可能、ワイヤレス充電も可能など、さまざまな面白い特長があります。

その中でも特に面白いと思うのが「ソーラーパネルを搭載」している点です。
「SoNAe」への充電は、基本的には家庭のコンセントを使用することが想定されていますが、非常時には本製品に搭載されているソーラーパネルからも充電できる(時間はかかりますが)という機能です。
つまり、消費電力の小さいIoTデバイスであれば、「SoNAe」につなぐことで、ソーラーパネルで発電した電力だけで常時稼働させることができるかもしれません。

机上検討

私が畑で使用しているIoTデバイスは概ね、「動作」時の消費電流値が50mA〜100mA@5V程度、「ディープスリープ」中の消費電流値が数mA〜20mA@5V程度です。
電源の制約がある場合は、デバイスを「動作」「ディープスリープ」と間欠動作させることで、極力消費電力を下げ、電池などでも長期稼働できるように工夫しています。

さて、「SoNAe」には300mA@5V(1.5W)のソーラーパネルが4枚搭載されています。
3日のうち3.5時間だけ最大能力で発電できるとすると、3日で発電できるのは (300mA × 4枚) × 3.5h = 4200mAh@3日 となります。
よって、「SoNAe」にIoTデバイスをつないだ場合、IoTデバイスの消費電流値が 4200mAh / (24h × 3日) = 58mA 以下であれば、ソーラーパネルで発電する電力だけで常時稼働できる計算になります。

上述のように、IoTデバイスの動作時の消費電流値は50mA〜100mA程度なので、常時動作させると若干電力が足りませんが、ディープスリープを組み合わせれば何とかなりそうです。

なお、「SoNAe」のバッテリー容量はIoTデバイスの消費電力に比べて非常に大きいので、バッテリー容量がネックになる心配はありません。

AUTO POWER OFFについて

多くのモバイルバッテリーには「AUTO POWER OFF」という機能がついています。
「AUTO POWER OFF」は、モバイルバッテリーが給電していない時に、自動的にモバイルバッテリーの電源がオフになる機能で、一度オフになってしまうと、何らかの操作をしない限り再度オンにすることはできません。
「AUTO POWER OFF」するかどうかは、モバイルバッテリーから給電している電流値で判定されます。一定期間にわたり、モバイルバッテリーから給電する電流値が一定値以下であれば、モバイルバッテリーがオフになるという仕様です。

モバイルバッテリーを普通に使う際には非常に有用な機能ですが、モバイルバッテリーでIoTデバイスを動かそうとすると、この機能がネックとなります。
IoTデバイスを長時間ディープスリープさせると、「AUTO POWER OFF」で電源が遮断されてしまうため、長時間にわたりディープスリープさせることができず、これによりIoTデバイスを十分に低電力化させることができなくなります。
また、上述のとおり、IoTデバイスの動作時消費電流値は比較的小さいため、ディープスリープ中だけでなく、通常動作中であっても「AUTO POWER OFF」で電源が遮断されてしまう危険性があります。

実際にIoTデバイスをつないで確認してみました。

実験に使うデバイスですが、USBポートがあり、バッテリーを内蔵していないIoTデバイスということで、「ESPr Developer」と「ATOM Lite」を使うことにしました。


まずは、これらのデバイスを数台準備し、以下のような簡単なスケッチを書き込みます。

  • 何もしない。
  • Wi-Fiに接続するだけ。
  • LEDを点滅させるだけ、など。

いずれもディープスリープはさせません。
テスターで消費電流値を測ると、40mA〜80mA程度になりました。

これらを「SoNAe」につないでみました。

すると、最初は起動するものの、いずれのデバイスも、数秒後(5秒程度)には電源が供給されなくなり、停止してしまいました。40mA〜80mA程度の消費電流値では、「AUTO POWER OFF」で電源供給がストップしてしまうようです。

次に、USBハブを介して、複数のIoTデバイスに同時に給電させてみました。

その結果、合計の消費電流値が100mA程度の時には電源供給がストップし、150mA程度であれば電源供給はストップせず、継続して動作させることができました。
消費電流値が100mA〜150mAの間くらいに、「AUTO POWER OFF」するための消費電流値のしきい値があるようです。

上述のように、IoTデバイスの動作時の消費電流値は50mA〜100mA程度です。Wi-Fi接続処理中など、一時的に消費電流値が大きくなることはありますが、意図的に消費電流値を大きくするのもそう簡単ではありません。

残念ながら、IoTデバイス単品を、特に工夫せずに「SoNAe」につないでも、「AUTO POWER OFF」機能が働いてしまうため、長期稼働させることはできないようです。

AUTO POWER OFFについて(その2)

そんな訳で、「SoNAe」でIoTデバイスを動作させることは諦めていたのですが、いろいろと触っているうちにあることに気付きました。

「SoNAe」には、同時に複数のデバイスに充電するために、複数のUSBポートがついています。
上述の実験では、複数のIoTデバイスに同時に給電させる際に、USBハブを使っていたのですが、それをやめて、複数のIoTデバイスを「SoNAe」の複数のUSBポートに直接つないでみたところ、一方のUSBポートにつないだデバイスはすぐに停止したにも関わらず、もう一方につないだデバイスは停止せずに動き続けたのです。

下の写真で、右側のUSBポートではデバイスは停止し、左側のポートでは動作し続けます。

つまり、

  • 「AUTO POWER OFF」は、「SoNAe」につながっている全デバイスに対して制御されているのではなく、個々のUSBポート毎に制御されている。
  • 意図的な仕様によるものか、個体差によるものかは不明だが、USBポートによって「AUTO POWER OFF」のしきい値が異なる。

ということになります。

ちなみに、左側のポートには、そもそも「AUTO POWER OFF」機能がないのではないかと少し期待したのですが、「動作」「ディープスリープ」と間欠動作するデバイスで実験したところ、ディープスリープ時間が30秒なら動作し続けたのに対し、ディープスリープ時間を45秒にすると停止してしまいました。
左側のポートにも「AUTO POWER OFF」機能はあり、30秒に一度は電流消費しないと停止してしまうようです。

いずれにしろ、左側のポートを使うことで、ソーラーパネルで発電した電力だけで、IoTデバイスを常時稼働できる可能性が出てきました。
今後、もう少し調査してみたいと思います。