丹波篠山市で「獣がい対策実践塾」に参加しました

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獣害対策

先日、丹波篠山市で開催された「獣がい対策実践塾」というイベントに参加してきました。

このイベントは、丹波篠山市で活動しておられる「里地里山問題研究所(略称:さともん)」というNPO法人が主催しているもので、この地域で大きな問題となっている獣害の対策を、地域内外の人員が協力して進めることをとおして、地域の活性化を図ろうというものです。

今回は、丹波篠山市の「八代」という地区にお邪魔して、この地区での事例を題材として、色々なお話を伺うことができました。

現地見学

最初に、対策の現場を実際に見学させていただき、当事者の方々のお話をお聞きすることができました。

八代は、周囲を山に囲まれた山裾の地区で、サルによる被害が非常に多いのが特徴です。
見学させていただいた場所は、自宅の横に小さな畑があり、そこで住民の方が自分が食べる野菜を自家栽培しているのですが、畑のすぐ横まで山がせまっており、以前はその山からサルが畑に入ってきて、野菜を食べられてしまっていたそうです。
このような畑をやっているのは、高齢の方が多く、獣害にあうことで農作業に対する意欲をなくし、それが地域全体の活力の低下につながっていたそうです。

このような状況に対し、サルの防護柵(電柵)を設置することで、被害が激減したとのことです。

特長的なのは、その取り組み方法で、柵の材料費を行政および自治会が100%負担し、当事者の負担をゼロにしたそうです。また、柵の設置作業は本来、当事者が自分で行わなければならないのですが、この地区では、この取り組みに参加したメンバーが全員一緒になって作業し、対象の畑に、順番に柵を設置していったそうです。
高齢者の方にとっては、自分だけで柵を設置するのは困難ですが、このような取り組みによって、皆ができることをやることで、柵を設置することができたとのことです。

こちらが設置した電柵です。ちなみに、柵の材料費は1メートルあたり1500〜2000円、自作で工夫すれば1000円程度でなんとかなるそうです。

次に、サルをそもそも里に近づけないための対策です。

山里では多くの柿の木を見かけますが、柿の実はサルの大好物とのことです。
最近は人間が柿をあまり食べなくなっており、また、高齢者には柿の実をとるのも大変で、特に高いところになっている柿は放置することになってしまい、まるでサルのために柿を育てているような形になっているそうです。
柿の木は山裾に植えられているため、サルが簡単にくることができ、そこからさらに畑に入るための動線になっているそうです。

このため、柿の木を伐採するのが非常に大切です。一方、柿の木はその家に先祖から続く大切なもので、思い入れもあり、簡単には切らせてもらえないケースも多いそうで、そのような場合は木を剪定するだけでも、サル対策としては効果があるそうです。

こちらが、3年前に高さを低くした柿の木です。人の手の届く低いところに実がなっていました。

その他、今後は山の中の見通しを良くするために、間伐も行う予定とのことです。

サルについては、これらの方法で被害が大幅に減っているのですが、他にも多いのが、シカによる被害です。

シカについては、山と里の境界に防護柵を設置しているそうです。
防護柵は、適切に設置されていれば効果は非常に高いそうですが、壊れることも多く、定期的な見回りが必須とのことです。
この地区には、シカ柵担当の委員がおり、3ヶ月に1回のペースで見回り、簡単な補修も行っているそうです。また台風や暴風のたびに、手の空いている人が見回りを行っているそうです。ただ、シカ柵は傾斜が急な場所に設置されており、見回り作業はかなりの重労働のようです。
そのため、地域によっては、十分な見回りができず、柵の効果がなくなってしまうこともあるようです。

また、場所によっては人間とシカの動線が重なっており、柵を設置できないところもあります。この地域でも、シカが車用の舗装道路をとおって畑にやってくるのが、たびたび目撃されています。
人間が使う道路に柵を設置する訳にもいかないので、このような場所には、檻を設置しています。

以前の檻は、動物が踏むと扉が閉まるなど、動物まかせの仕組みでしたが、動物が捕まる瞬間を他の個体に見られてしまうと、その個体は二度とその檻には近づいてくれない、捕まえたい個体(被害をおよぼす個体)と実際に捕まる個体が違うなど、問題もいろいろあり、きちんと制御して捕まえる必要があるそうです。

そのため、ここには、IoTを活用した檻が設置されています。
動物が檻に入るとメールで通知が届き、インターネット経由でスマホから、檻の中の映像も見ることができます。
アプリにはチャット機能もついており、捕まえるかどうかを皆で相談した上で、スマホのボタンを押すことで、檻を閉めることができます。

この檻は、先月までは別の場所に設置されており、そこでは年間十数頭捕獲できたそうですが、現在設置している場所での効果確認はこれからとのことです。

セミナー

八代は、人口100名弱で高齢化率47%という地区ですが、ここでは平成20年頃からサルの被害が出始めました。
主に山裾の自家菜園での被害が多く、そこで野菜を育てている高齢者の方々が農作業に対する意欲を喪失し、それによって地域が衰退していくことが危惧されていました。

当初は獣害対策は特に行っていなかったようですが、対策を行うようになったきっかけは、地区で開催した勉強会とのことです。
勉強会でサル被害の現状、および有効な対策(防護柵)の存在を知ることができ、数件の農家の方々が実際に柵を導入することにしたそうです。その効果が絶大だったことから、その後、他の農家の方々も柵を設置するようになり、その結果、獣害対策の活動が地域全体で盛り上がっていったそうです。

追い払いのためのロケット花火を扱える人も増えていき、花火を鳴らしたときの行動も住民が一斉に行うなど、地域全体で対策に取り組む風土が醸成されていったようです。

この結果、八代地区でのサル被害は激減し、八代の取り組みは獣害対策の成功例となっています。

八代地区ではこのように、獣害対策の効果が上がっていますが、丹波篠山市全体では、獣害の被害額は年間1800万円、そのうちサル、イノシシ、シカで7割程度を占めています。
被害の半分以上はコメと黒大豆ですが、被害にあったということは、餌の存在を動物に知られてしまったということで、何らかの対策をとらないと、繰り返し被害にあってしまいます。

また実際には、ここで被害額としてあがってこない被害も沢山あります。農家の方々が被害とは感じないもののことで、例えば廃棄作物、生ゴミ、ひこばえ、黒豆の残渣、利用していない果樹などです。
これらが野生動物を集落に誘引してしまいます。動物がこれらを食べることで、栄養状態がよくなり、個体数が増え、さらに被害が増えることになってしまいます。また、これらの作物は食べても怒られないので、畑などで作物を食べることに慣れてしまいます。

つまり、動物にとって畑は「おいしいものをお腹いっぱい食べられる場所」として認識されてしまいます。

獣害に強い集落にするには、このような「被害と感じない誘引物を管理」する他、「防護柵を適切に設置」、「出没しにくい環境づくり」、「追い払い」、「捕獲」を組み合わせて取り組むことが重要になるようです。

その際には、地域主体で自主的に取り組むことが肝心だとのことです。

地方の農村では、高齢化に獣害が追い討ちをかけ、労働意欲の減退が農村の衰退につながっています。
これに対し、このような対策を主体的に行うことで、意欲がわき、目標もでき、地域がまとまり、地域に人やお金を呼ぶことができ、楽しみができるなど、地域がどんどん元気になっていきます。

具体的には、「さともん」では、農家、行政、JA、地域の業者、NPO、新規就農者、高校生、大学生、主婦、都市住民など、さまざまな立場の人を巻き込み、皆で獣害対策に取り組むことで、地域活性化を図ろうとしています。

まとめ

今回のセミナーでは、これまで書籍などで勉強してきたことを、改めて再確認できました。

  • 獣害対策は継続が重要。
  • 地域住民が主体的に参画することが肝心。
  • 農家が被害と感じない作物もきちんと管理する必要がある。
  • 人が管理しやすい農地は動物に入られにくい。
  • シカ柵は適切な管理が重要だが、管理の負荷は重い。など

また、「獣害対策を行うことで地域を元気にする」という視点が、とてもユニークだと思いました。
実際、今回お会いした地元自治会の方々は、みなさんとてもお元気で、主体的にとても楽しそうに活動しておられたのが印象的でした。

このような活動により、当事者だけでなく、地域のさまざまなステークホルダーが、さまざまな形で交流していくことで、新たな動きにつながっていく可能性もあります。

特に今回のイベントには、地元の高校生の方々が、部活動(自然科学部)の一環として大勢参加していました。「さともん」ではインターンの大学生も活躍しており、このような若い方々との世代を超えた交流は、地域を元気にするのにとても有効だと感じました。

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さとやまノート