「IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代」を学習

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自然農学習

「IoTが拓く次世代農業 アグリカルチャー4.0の時代」という書籍を読みました。
現在の日本の農業の課題について考察した上で、対策としてIoTなどのスマート農業の活用を提案する内容です。

主題であるスマート農業の部分については、すでに知っている内容も多かったのですが、前半に書かれている日本の農業の現状分析については、私の全く知らないことばかりで、なかなか興味深い内容でした。

ここでは、この書籍の中の「日本の農業の現状分析」の内容について、簡単にまとめておきます。


日本の農産物の品質は世界でもトップレベルと言われていますが、産業としての日本の農業は低迷しています。

その理由としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 農作業が「きつい」「汚い」「カッコ悪い」。
  • 農業従事者の所得が低い。
  • 投資負担が大きく回収率も低い。天候リスクも伴う。
  • 生産面、販売面で創造性を発揮できない(大半が農協ルートのため)。

農家1戸あたりの農地面積が小さいため生産性が低く、所得が上がらないため離農者が増加し、結果として農家の高齢化が進んでいます。
また、減反政策や耕作していない農地でも課税が免除されるなどのゆがんだ保護政策により耕作放棄地が増大し、農業の衰退にさらに拍車をかけています。

しかし、逆に考えると「農業就業人口の減少」は「1人当たりの農地拡大」と前向きに捉え直すこともできます。
農家の高齢化や離農者の増加による「土地あまり」の状況は、「農地集約のチャンス」となります。
もともと日本の農産物は高品質なので、農地を集約し、生産性を上げることができれば、産業としての農業の競争力向上にもつながります。

具体的に「露地栽培」を例にして考えてみます。

日本の露地栽培の平均営農面積は約1haで、その粗収益は520万円/年、1人あたりの農業所得は83万円/年です。
これではとても、農業だけを仕事として生活していくことはできません。
しかし、営農面積が7ha以上であれば、粗収益は4093万円/年、1人あたりの農業所得は485万円/年になります。

一方、露地栽培には「作業時間が長い」という特徴があります。
日本では農地が分散しているため、たとえ農地を集約しても、例えばアメリカや北海道の広大な農場のようには状況にはならず、単純に規模を大きくするとそのまま作業時間が増えてしまうだけという状況におちいってしまいます。

つまり、何らかの効率的な農法を導入して作業時間を短縮することができれば、農地の規模を拡大できる余地が生まれ、それによって収益を向上させることができるようになります。
ただし、効率的な農法を検討する際には、細切れに分散された農地でも効果が上がる方法を考える必要があります。

例えば、農地を集約して農地面積を10ha程度にした上で、「人件費を増やさない」「減価償却費を増やさない」「作物の品質(単価)を落とさない」「作物の収量を落とさない」「光熱費を増やさない」「維持費を増やさない」ことができれば、1人あたりの農業所得を1000万円/年にすることができるとのことです。

書籍では、これに対する解決策として「AIやIoTを駆使した、汎用性があり、コストパフォーマンスの高いロボット」の活用が提案されています。

実際には、このようなロボットの実現は、技術面だけでなくビジネス面から見てもなかなか難しいものがあると思います。
しかし、具体的にどのような方法で解決していくかはともかくとして、上記のようなポイントに着目し、対策を実行していくことで、補助金に頼らなくても、農業を仕事として成り立たせることが可能になるということが理解できました。


例えば、私が趣味で楽しんでいる「自然農」の家庭菜園ですが、除草などにものすごく手間がかかる反面、農薬や肥料は不要、水やりも不要と、一般的な露地栽培に比べてアドバンテージとなる点もあります。

もしも「自然農」での収量や品質を向上させ、それを安定させた上で、除草などの手間を劇的に削減する方法を思いつけば、農地面積を拡大することも可能となり、もしかしたら「自然農での野菜栽培」を仕事として成り立たせることも可能になるのかもしれません。