[gacco講座]「SOFIX科学有機農業入門講座」を受講

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自然農学習

「gacco」というオンライン学習サービスがあります。

「gacco」は、(株)ドコモgacco が運営しているオンライン講座プラットフォームで、さまざまなジャンルの大学レベルの講義を、誰でもオンラインで、しかも無料で受講できるサービスです。

ここで提供されている講座の中に、立命館大学が開講している「SOFIX科学有機農業入門講座」というものがありましたので、これを受講しました。

本講座は、有機農業の指標として立命館大学が開発した「SOFIX」を紹介するものですが、その中で説明のあった有機農法に関する一般知識について、簡単にまとめておきます。

有機農法とは

有機農法では、有機物(落ち葉など、炭素を含んだもの。つまり生物)を、土壌の微生物が分解し、無機物にします。それを作物が肥料として吸収し、光合成によって有機物をつくりだします。
つまり、土壌微生物がエンジンとなり、環境の中で炭素を循環させています。

それに対し、化学農法では、化学肥料(無機物)を圃場に直接施肥します。有機物を無機物に分解する必要がなくなるので、土壌微生物は必要なくなります。
化学肥料を使う圃場では、同時に農薬も使うため、農薬により、土壌微生物は死んでしまいます。
つまり、微生物のいない土壌に、直接無機物を施肥して、それで作物を育てます。

化学肥料が発明されたのはおよそ100年前です。それまで世界の農業は全て有機農法だった訳ですが、現在の日本では、なんと99.2%が化学農法に置き換わっています。
よって、現在の日本では、化学農法が「慣行農法」と呼ばれています。

化学農法(慣行農法)には、「再現性が高い」、「施肥が容易」、「収量が多い」といったメリットがある一方、「環境負荷が心配」、「食の安心」、「肥料価格の高騰」、「肥料の原料が地下資源のため、持続可能性の問題あり」などのデメリットがあります。
化学肥料は日本で製造していますが、その原料は輸入に頼っており、近年は原料価格が高騰したり、輸出制限がかけられたりもしているそうです。

一方、有機農法には「環境によさそう」、「健康によさそう」、「食の安心によさそう」といったイメージ面でのメリットはありますが、「方法が確立していない」、「収量が少ない」、「管理が面倒」などといったデメリットも挙げられます。

良い圃場の条件は、「土壌環境が良い」、「良質な作物がたくさんとれる」、「低コストで営農可能」と言えます。
「土壌環境が良い」とは、化学肥料、化学農薬をできるだけ使わない状態を指しますので、有機農法で、良質な作物をたくさん低コストで収穫することができれば、まさにそれが良い圃場と言えます。

慣行農法の問題点

慣行農法では化学肥料を使います。
化学肥料を使うと、病原菌や病害虫の拮抗菌が少なくなるため、病気や虫が増えます。
病害虫に対処するため、農薬が必要になります。
農薬の連用により土壌微生物が少なくなり、連作障害が顕著になります。

日本では、1反(10a)あたり2万円ぐらいの農薬を使っているそうです。
日本の農薬使用量は、韓国に次いで世界2位、アメリカの6倍程度で、日本は世界屈指の農薬大国となっています。

慣行農法により、農地、体内の両方で微生物が減っています。
有機農法の土地では、微生物が活動しているため土の温度も高く、やわらかい状態ですが、慣行農法の土地はカチカチに硬くなってしまっています。
また体内では、化学物質により腸内細菌が減ってしまっています。日本人の平均体温は、化学肥料普及前は36.8℃だったものが、現在では36.0℃に下がっているそうです。

その他にも、慣行農法では作物中の硝酸イオン(ガン、胃炎、アルツハイマー、認知症などの原因となる)が激増、ミネラルを入れないため作物中の栄養分が激減、作物中の残留農薬が激増(日本の基準は世界的に見て非常に緩い)などの問題もあります。

このような多くの問題がありながらも、効率化のため、日本の多くの農地では慣行農法が採用されています。
それにも関わらず、農産物の輸出/輸入比率、食料自給率ともに、日本は先進国最下位です。

つまり、日本では、農業の効率化のために化学肥料を多用しているにも関わらず、日本の農業競争力は低い状態になっています。

農地の良し悪し(地力)について

慣行農法、有機農法のいずれにおいても、農地の良し悪し(地力)を把握するためには指標が必要となります。
実際の講座ではここで、本講座のテーマである「SOFIX」の説明になるのですが、「SOFIX」は専門機関に依頼しないと調査できない数値になりますので、ここでは一般的な考え方についてのみ記載します。

「地力」は、以下の指標で表現されます。

  • 化学性:化学物質量(無機物、肥料)、pH、EC(電導度。肥料成分が多いと高くなる。高すぎても低すぎてもダメ)
  • 物理性:保水性、固相・液相・気相(土の柔らかさ、保肥力)
  • 生物性:有機物含有量(炭素量)

慣行農法では「化学性」=「地力」と言えます。そのため、これまでは「化学性」の測定方法だけが発達してきました。
対して、その他の項目、特に「生物性」についてはこれまで指標がなく、それを把握する指標が「SOFIX」とのことです。

有機農法では、土壌微生物の数、窒素やリンの循環度合を把握する必要があります。
なお、リンはミネラルとも結合しやすく、土中にリンが多いとミネラルが減ってしまうため、少なすぎても多すぎてもダメなようです。

土づくりについて

現状の「地力」を把握したら、次は改善(土づくり)をする必要があります。

有機農法での「土づくり」とは、微生物のための環境づくりを指します。
土壌環境を把握したら、足りない微生物を増やすため、その微生物が好む有機物(バイオマス)を投入します。すると微生物が少しずつ分解し、肥料が安定供給されるようになります。

有機肥料には、以下のようなものがあります。

  • 発酵系資材:鶏糞、牛糞、豚糞、バーク堆肥(木の皮を発酵させたもの)
  • 非発酵系資材:大豆粕(サラダ油の粕)、油粕(なたね油の粕)、水草、木質チップ

炭素含有量はどの肥料も同程度ですが、窒素含有量は肥料によって大きく異なっており(大豆粕や鶏糞は多く、バーク堆肥や木質チップ、牛糞は少ない)、地力によって施肥すべき肥料が変わってきます。

また、一定期間後の残存率も肥料によって大きく異なり、「鶏糞は即効性があるが長持ちしない」、「バーク堆肥は土壌改良に使うのは良いが、肥料としての効果は少ない」などの特徴があります。

無機化率種類用途
早い鶏糞、水草肥料(3〜4ヶ月)
中くらい牛糞、油粕、大豆粕肥料(4〜9ヶ月)
遅いバーク堆肥、木質チップ土壌改良用(9ヶ月以上持続)

なお、「トマトは窒素を入れすぎると実がつきにくい」、「葉物野菜は窒素が必要」など、育てる野菜によっても施肥すべき肥料が変わります。

典型的な慣行農法の畑を改善した時の手順は以下のとおりです。

  • 牛糞堆肥で炭素を増やす(1トンあたり1500円の水分量の少ないものを使用)
  • 大豆粕で窒素を増やす(大量に投入)
  • 微生物の接触を増やすために耕運を実施(空気を入れることで好気性の微生物を増やす。ただし混ぜすぎると微生物が死んでしまうので要注意)
  • 1カ月ぐらいおいておく(比較的良好な農地なら1~3週間ぐらいで微生物が増えてくる)

有機農法は「収量が少ない」というイメージがありますが、適切に土づくりを行えば、慣行農法と同等の収量になるそうです。
また、ミネラルが豊富、硝酸イオンが少ないなど、品質面でのメリットも多いようです。