私はボランティアで、小中学生に電子工作やマイクロビットプログラミングを教えるワークショップを実施しているのですが、現在、その講師メンバーや一部の生徒と一緒になって、おもちゃの「ケーブルカー」を製作中です。
そもそもケーブルカーをつくることになったきっかけは、私たちの活動場所の近くにある「妙見の森ケーブル」が営業終了するというニュースでした。
ケーブルカーの廃止を惜しんだメンバーから、ケーブルカーのおもちゃをつくりたいという意見が出て製作をスタートしたのですが、ケーブルカーの仕組みは当初思っていたよりも複雑で、とうとう本物のケーブルカーの方は営業終了してしまったのですが、おもちゃの製作はそれに間に合いませんでした。
ここでは、おもちゃのケーブルカーをつくる中でも一番の難関である「車体とレール」について、製作状況をお知らせしようと思います(ちなみに、この「車体とレール」は別のメンバーの方がつくってくれています)。
ケーブルカーは、1本の長いケーブルの両端にそれぞれ車両が取り付けられており、片方の車両が引き上げられると、もう片方の車両が下りてくるという仕組みで動いています(つるべ式)。
ひとつのレール上を2両の車両が逆方向に走行することになるため、中央では2両の車両がすれ違う必要がありますが、ケーブルカーでは車両がすれ違うために「溝車輪」と「平車輪」が使われています。
ケーブルカーの車輪は、外側が「溝車輪」、内側が「平車輪」になっています。
「溝車輪」はレールを挟んでいるのに対し、「平車輪」はレールに乗っているだけのため、車両は外側のレールに沿って進むことになります。
すれ違う2両のケーブルカーは、溝車輪の位置が逆になっているため、レールのすれ違いの部分ではそれぞれの車両が外側に進み、ぶつからずにすれ違うことができるという仕組みです。
もうひとつ、ケーブルカーのおもしろい仕組みとして「誘導滑車」があります。
ケーブルカーはケーブルで引っ張られているため、当たり前ですが、常に山上駅とケーブルでつながっています。
線路が完全な一直線ならともかく、曲がっていたり、例えば先ほどのすれ違いの部分などでは、もしも単純にまっすぐケーブルを引っ張っているだけだと、ケーブルがレールから外れてしまいます。
そのようなことになると、もう1両の車両がレール上を進めなくなってしまうため、ケーブルはレール内の正しい位置に維持されている必要があります。
この、ロープを正しい方向に導くための仕組みとして「誘導滑車」が使われています。
また、レール内にケーブルが納まるよう、レールにはケーブルがとおるためのすき間もあります。
これらの仕組みを、おもちゃのケーブルカーでも再現したいと考えています。
このように、溝車輪と平車輪を使って車体をつくりました。
レールにはひのきの角棒を使い、熱湯に浸けて柔らかくしてから型にはめて固定することで、所望のカーブになるよう曲げています。
枕木を敷いて、レールを組み上げていきます。
また、小さな滑車を自作して、線路の中に取り付けました。
ケーブルがとおるよう、レールにすき間を設けています。
車体はこんな感じになりました。
車輪を車体に固定させていると、うまくレールに乗って進んでくれなかったため、溝車輪の方だけ向きが変わるようにしています。
完成品を設置する予定の畑に持ってきて、所望のとおりに動くか確認してみましたが、一部の滑車にケーブルがうまくかからないようで、もう少し調整が必要です。
ワークショップの生徒(小学6年生)が、3Dプリンタでボディを作成してくれています。
組み合わせるのはもう少し先になりそうですが、できあがりが楽しみです。
つくりかけのケーブルカーをワークショップに持っていき、子供達に見せてみました。
これまでにも完成した作品はたくさん見せてきましたが、製作途中の作品でも、子供達は興味津々で見入っていました。
このように、まだうまく動かない状態のものを見てもらうことも、子供達にいろいろな発想をしてもらうにはいい刺激になるのかもしれません。