私は畑に何台かのTimer Cameraを設置して、畑の様子を定期的に撮影しているのですが、先日、里山保全の活動をされている知り合いの団体の方から、屋外での写真撮影について相談を受けました。
その団体では、里山の植生保護のため、里山の一部エリアを柵で囲ってシカなどが入れないようにしているそうです。
ところが、現地の定期調査を行ったところ、設置していた柵の一部が倒木のために倒壊しているのが見つかり、柵が壊れた時期によっては、既に獣がエリア内に侵入してしまっている可能性があるとのことです。
現状は、獣が入っているかどうかを確認するためにトレイルカメラを設置して様子を見ているところですが、現地は坂が急なため、頻繁に現場に行ってSDカードを交換するのがなかなか大変なのだそうで、Webカメラのように、撮影した画像を遠隔地で確認することができないか?と考えているとのことです。そのような経緯で、同様のことを既に実施している私のところに相談にこられたようです。
具体的には、以下のようなことを行いたいそうです。
- 人感センサで獣がいるかどうかを常時チェックし、獣を検知したら静止画を撮影する。撮影時にはLEDライトを点灯する。
- 撮影した画像データは、Wi-Fiと携帯電話回線を使ってインターネットに送信し、Webサーバに保存する。
- Webサーバに保存された画像データを、Webブラウザを使って遠隔地から閲覧する。
- 現地に電源はないので、必要な電力はソーラー発電で賄う。冬季で木の葉が落ちているので日光は地面まで届いており、50Wのソーラーパネルを置ける程度の場所も確保できる。
- 都市部近郊の里山なので、携帯電話の電波は届いている。
現時点で余っている部材がいろいろあるので、実際に試作してみることにしました。試作した装置は畑に設置して動作確認することにします。
カメラマイコンは、これまでも多用してきた「Timer Camera X」を使います。
Timer Camera X(Yahoo!ショッピング)Timer Cameraに人感センサとLEDライトをつなぎます。LEDライトは12V駆動のため、「M5Stackミニリレーユニット」をつかってTimer CameraからON/OFF制御します。
人感センサ、リレーユニットともにTimer CameraのGROVEポートにつなぎたいので「M5Stack HUBユニット」も使います。
人感センサで人や獣の接近を観測します。獣を検知したらリレーを介してLEDライトを点灯させ、その後に静止画撮影します。撮影した画像はWi-Fiを使ってインターネット上のWebサーバに送信します。
Wi-Fiでインターネット接続するために、一般的な「モバイルWi-Fiルータ」を使います。
Timer CameraやLEDライトなど、およびモバイルWi-Fiルータに電源供給するために「50Wソーラーパネル+20Ahバッテリー+チャージコントローラ」のセットを使用します。
各部材は以下のように接続します。
Timer Camera、人感センサ、LEDライトなどを接続した結果は以下のようになります。LEDライトは元々防水対応のものですが、それ以外のパーツは防水ケースに収納しています。なお、人感センサはプラスチック越しでは検知できないため、防水ケース前面にケーブルグランドを取り付け、そこに人感センサを差し込んでいます。これで人感センサの検知部分は外に出した状態で、その他の部材を防水することができます。
チャージコントローラまわりの接続は以下のとおりです。今回使用しているチャージコントローラは、元々セットになっていたものとは別のものです。
これらはコンテナボックスに入れてあります。コンテナボックスはソーラーパネルの下に置いておきます。
カメラなどを収納した防水ケース、LEDライトそれぞれにカメラ用三脚を取り付け、普段からシカがよく通る畑の入口に設置します。
設置してから10日程度経過しました。
撮影された画像は、このような感じでWebブラウザで閲覧できます。
人感センサは実際には温度変化を検知しているため、晴れた昼間には獣がいなくても誤検知してしまう場合があり、1日に数枚程度、獣が写っていない画像が保存されています。
この期間には、以下のように何種類かの獣を撮影することができました。カメラのピントをいじってしまったのでややピンボケですが、どんな動物がきているか確認することはできます。
なお、今回のしくみでは、モバイルWi-FiルータとTimer Cameraをどちらも常時稼働させていますが、これまでの経験より、この構成の場合は50Wソーラーパネルでは発電能力に全く余裕がありません。
1日のうち少しでも日陰になる時間帯があったり、悪天候が長く続く場合には電力不足で停止してしまう可能性が高いため、より安定して稼働させたい場合は、ソーラーパネルやバッテリーをもっと大きいものにした方がよいと思います。
なお、私がM5Stack、M5StickCの使い方を習得するのにあたっては、以下の書籍を参考にさせていただきました。
ごく基本的なところから、かなり複雑なスケッチや、ネットワーク接続など、比較的高度なものまで、つまづかずに読み進めていけるような構成になっており、大変わかりやすい本です。