「リジェネラティブ農業」と「自然農」のちがい

スポンサーリンク
自然農学習

「リジェネラティブ農業」は「不耕起」をベースとする農業のスタイルです。


「土を育てる」という書籍によると、土を耕さず、常に多様な作物やその他の植物を育てることで、土の中により多くの炭素を閉じ込めることができるようになり、「気候変動問題」の対策になるとのことです。
その他にも、「生態系の回復」や「環境改善」など、数多くのメリットが得られます。

さて、「不耕起」といえば、私が家庭菜園で楽しんでいる「自然農」も不耕起です。
その他にも、多様な品種を混作・輪作したり、雑草を抜かずに作物と共生させたりと、多くの点が「リジェネラティブ農業」と非常に似ています。

ここでは、上記の書籍の「訳者あとがき」や こちら の記事より、私なりに理解した「リジェネラティブ農業」と「自然農」のちがいについて、簡単にまとめておきます。

リジェネラティブ農業と自然農の違い

「リジェネラティブ農業」「自然農」とも、畑をできるだけ耕さないという点は同じです。

また、どちらも畑にできるだけ多様な植物が生えている状態にするのですが、その際に「リジェネラティブ農業」では「カバークロップ」を使うのに対し、「自然農」では「雑草」を活かします。
「リジェネラティブ農業」においては、複数種類の種子をミックスしたカバークロップの研究も進められていますが、雑草と共生する「自然農」はその究極の形です。

なぜ、このような違いが生じているかというと、「リジェネラティブ農業」は経済的な理由から普及が進んでいるのに対し、「自然農」は現代の工業的農業に対する問題意識から発生しているのが理由です。
つまり、「リジェネラティブ農業」は「農業を効率化するための手法」なのに対し、「自然農」は「環境保護活動」としての側面が強いようです。
そのため「自然農」は無農薬志向での取り組みとなっており、なかなか収益が安定せず、それを乗り越えないとうまくいかないというストイックなイメージにつながっています。

アメリカの現状とその理由

アメリカでは既に、小麦や大豆では全体の40%以上、トウモロコシでは30%近くが不耕起で栽培されているそうです。
完全な不耕起以外にも、畑の一部だけを耕す「部分耕起」や、数年に一度だけ耕す「省耕起」など、さまざまなバリエーションがあるようです。

アメリカで不耕起が普及している理由は以下のとおりです。

  • 収穫高が向上する。
  • 土壌流出や土壌水分の減少などの土壌劣化(およびそれによる収穫高の減少)を抑制することができる。
  • 省コスト(耕さないことによる燃料代と時間の節約)により利益率が向上する。
  • 「強力な除草剤」と「除草剤で枯れないようにした遺伝子組み換え作物」をセットで使用することで、不耕起でも草の管理が容易。

日本の現状とその理由

日本で不耕起を実践している農家は、全体のわずか数パーセントとのことです。

その理由は以下のとおりです。

  • 日本では遺伝子組み換え作物を使えず、また無農薬志向のため、「除草剤」+「遺伝子組み換え作物」による草の管理を採用できない。
  • モンスーン気候のため、7~8月に非常に多くの草が生え、草の管理が困難。

日本で取り組むには

日本では不耕起農業での管理方法が確立していないため、安定した農業経営を前提にすると、現状では取り組むのは難しいようです。
具体的には、日本の農地にマッチした、雑草を刈ってそのままマルチとして置け、同時に不耕起での播種できる「乗用」の農機が必要とのことです。

ただし「小規模農業」や、私のやっているような「家庭菜園」の場合であれば、取り組むことはもちろん可能です。

日本型の不耕起(自然農)では、収穫量は減ってしまいますが、耕さないのでかかる労力も減り、資材費(ビニールマルチや堆肥など)も安くなります。
土壌は年々良くなっていくので収穫量はだんだん増えていきます。

また、畑を耕すと、作物と競争するような種類の雑草が生えるのに対し、不耕起にすると、雑草と作物がお互いの成長を邪魔しない植物相になっていくそうです。
つまり、不耕起を長く続けていると、雑草が生えていても収穫量はあまり落ちないようになるようです。

ただし、そのような植物相になるまでには非常に長い時間がかかるので、最初のうちは、有機栽培に加えてライ麦などをカバークロップとして播くのがオススメとのことです。


ちなみに、こちら の資料によると、10アールの畑で有機栽培した場合(1.5トンの堆肥を施用した場合)、年に140〜630kg(平均すると385kg)の炭素を貯留できるそうです。
また、こちら の資料によると、日本の家庭におけるCO2排出量は、1世帯あたり3903kgとのことです(産業分野での排出は除く)。

私が「自然農」で家庭菜園をしている畑が、ちょうど10アールぐらいです。
この畑で有機栽培をすると、自分の家族が排出しているCO2の10パーセントを土に戻すことができる計算になります。暖房でのCO2排出が全体の16パーセントとのことなので、それに近い量を土に貯めることができることになり、結構な量です。
また、不耕起であれば、有機栽培よりもさらに多くの炭素を土に貯留できるとのことです。
この畑で「自然農」をしていることで、かなりの量の炭素を土に貯めることができているようで、環境にもやさしい活動だと言えると思います。